巻頭特集は「ふたりで選ぶデートコース」。今月の旅ページは「この夏、GUAMがおもしろい」と、元気な笑顔はじける表紙と相まって、夏まっさかりのテンションを感じる号。中には「美人OL図鑑」や「通勤沿線 気になるオトコvol.42」もあったりと、想定読者が今よりもぐっと若く、はたらく未婚男女だったのだなあ、としみじみ感じます。
恋よりも「濃い」のが、巻中の特集「テイクアウトの店36軒大集合」。この時代は1軒1軒の店舗データに手描きのイラスト風マップが添えられることが多く、まとめて見るといかにも「汗をかき、足でかせいで、コツコツ集めた情報の束なんだなあ」という熱が伝わります。この熱は今もまったく減っていないけれど、見た目がスマートに整えられた分、読者のみなさんには伝わり難くなっているような気も。
ともあれ、なぜテイクアウトの特集がユニークか。実はこのテーマ、以前からよく企画会議に挙がるのです。そのたびに「話題が日常的過ぎ、ニッチ過ぎ」「鹿児島の人はそんなに惣菜を買わず、作っているのでは」と見送られることが多い。最近でこそ、外食でも内食(自宅で自作)でもない「中食」(なかしょく)の需要が高まり、注目を浴びていますが、ときは平成9年です。保守的な鹿児島で、テイクアウトだけをテーマに雑誌が特集を組むことは、それなりの英断だったはず。
掲載ショップには今は無い店も多いですが、同企画があれば今や常連の、どさんこおにぎりやおもちの味覚屋、河童の餃子にさくらじまのアイスなども、この頃すでに登場。
逆に現在とのギャップを感じる点は、実用本位な包装やトレーのデザイン、盛り方です。味とは別に見映えを意識する様子が少ない。あの頃、どこもこんなだったなあ。
「マンガ」というジャンルは、PCやインターネットと同様、平成初期と後期で世間から見た位置づけがガラリと変わった(向上した)ジャンルと言えると思います。
その意味では、今も40代以上のマンガ愛好者にカリスマ的な人気を誇る、鹿児島(指宿)出身の川原泉さんのインタビューが、見開きで収録された今号は貴重。
内容も 引用:~聞いてかわいい鹿児島弁ってあるじゃないですか。つくじるとか、つまんきるとか。~と、地元ならではの話満載で読み応えがあります。